『ジョジョ・ラビット』映画-解説・考察、原作との違いについて。

ジョジョ・ラビット

おすすめのヒューマンドラマ映画『ジョジョ・ラビット』の解説と考察です。

この記事は本作をすでに観たことを前提に書いています。

まだ映画を観ていない方や詳しいあらすじ(ネタバレなし)を知りたい方はこちらの記事をお読みください。

ジョジョ・ラビット

『ジョジョ・ラビット』映画-戦時下の少年の心をユーモアを交えて描いたヒューマンドラマ。

それでは、いってみましょー

『ジョジョ・ラビット』の解説と考察

第二次世界大戦下のナチス・ドイツにおいて10歳の少年ジョジョの心の変化を描いた『ジョジョ・ラビット』。

しっかり観ないと、ん?っていう点がチョイチョイあるので、1つずつわかりやすく説明していきます!

この記事を読めば、さらに本作を好きになれると思うのでぜひ最後まで読んでくださいね。

ジョジョの父親と母親について解説・考察

ロージー

まずは、ジョジョの父親と母親について解説していきます。

この夫婦は反ナチ運動に参加する活動家です。

父親のポールは2年前のイタリア出征で姿を消し、外国で活動。

ジョジョには内緒でしたが、戦争が終われば帰ってくると約束して家を出ており、本作には登場しませんでした。

母親のロージーはユダヤ人少女エルサをかくまったり、反ナチ運動のビラを配ったりしていました。

ビラには「BEFREIT DEUTSCHLAND BEKAMPET DIE PARTEI」と書かれており

日本語にすると

「ドイツを解放しよう」

補足
文末のPARTEI(パータイ)とはナチスの党名を指しています。

そしてこのビラは、彼女が絞首刑にされたときに足に貼りつけられていたビラでもあります。

彼女は生前、仲間が絞首刑にされているのを見て、ジョジョとこんなやりとりをします。

「(絞首刑にされた人は)何をしたの」
「できることを」

このやりとりは、ジョジョの心に深く刻みこまれます。

そして、終戦後、ジョジョはエルサに告白したあとに、鏡に向かってこう言います。

「ジョジョ・ベッツラー 10歳半 今日から・・・できることをする」

こうしてジョジョはナチスとの決別を心に決め、空想上の友達だったアドルフ・ヒトラーを追い出すことに成功します。

本作にはこんな風にいろいろな伏線があるんです。

他にも

「愛なんて見てもわからない」
「目に見えなくてもわかるわ 感じるの 痛いの お腹の中で蝶が飛び回る感じ」

このセリフは、その後ジョジョがエルサにお風呂を貸してあげるシーンで回収されます。

エルサのことがだんだん好きになってきたジョジョは、ロージーの言った通りにお腹の中で何匹もの蝶が飛びまわっている感覚をあじわいます。

また、母親のロージーは大尉のキャプテンKとも旧知の仲だったと考察できます。

続いてはこの点について詳しく解説していきます。

キャプテンKについて解説・考察

キャプテンK

サム・ロックウェルが演じるキャプテンK。

個人的には本作で一番好きなキャラです!

考察すればするほどメッチャいいやつというのがわかるんです。

まず、彼は大尉という地位ですが反ナチスの思想の持ち主です。

一番わかりやすいのは、彼が同性愛者だということ。

部下のフィンケルに食べ物を「あーん」してイチャついたり

叱ったあとも、すぐに謝って見つめあって今にも抱きあいそうな雰囲気になったり

キャプテンKとフィンケルは同性愛カップルとして描写されています。

そして、当時のナチスでは同性愛は禁止されていました。

同性愛者は迫害の対象として逮捕され、場合によっては強制収容所に収容され、人体実験を施されたり、危険な作業を命じられ死亡するケースもあったと記録されています。

そんな状況ですから、キャプテンKとフィンケルは今のナチスに対して強い反感を抱いていました。

おそらく彼は、思想の上ではジョジョの母親ロージーと同じく反ナチ運動の同志だと考察できます。

それに、物語冒頭でジョジョが手りゅう弾で自爆したときには

「彼の母親に殺されるな」

と言っており、彼女の性格を知った旧知の仲だとうかがえます。

そして実際に会った時には「ベッツラー夫人(ロージー) 相変わらずお美しい」とも言っていますから知り合いなのは間違いないです。

それに、キャプテンKはジョジョのことをかなり気にかけています。

まず、プールサイドでジョジョからユダヤ人について聞かれたとき、

キャプテンKはウンザリしたような仕草をしつつも

「ユダヤ人を見つけたら俺らに言え 親衛隊が殺しに行く 協力者もろとも念には念を入れて周りの人間も延々と続く」

と言っています。

周りの人間も殺されるなんて言われたら、報告なんて出来っこないです。

なので、これは、もし何かあっても通報するなという忠告なんです。

おそらく、彼はジョジョの母親が反ナチ運動をしているとすでに知っているのでしょう。

また、この少しあとの場面でも「家は問題ないか?」とジョジョを気遣う姿勢もみせています。

そして、ジョジョの家にゲシュタポ(秘密警察)の捜査が入る時

このときもキャプテンKは、

「自転車のタイヤがパンクしてね」

と言って、息を切らせながらジョジョの前にあらわれます。

彼はゲシュタポがジョジョの家に行ったことを知り、急いで駆け付けたのでしょう。

エルサをみたときには、眉間にシワをよせて動揺しますが、なんとかごまかして彼女を守ることに成功します。

ゲシュタポはこの時ジョジョに

「お母さんはどこ?」

と言っており、帰る時には「そうだあの男を吊るしたままだ」と言っています。

なので、少なくともこのときはまだロージーは反ナチの疑惑があるだけで無事でした。

そして月日が過ぎ、最後の戦争シーン。

キャプテンKはフィンケルと共に特製の装備で戦場を駆け抜けます。

この時のキャプテンKは目元に化粧をしていますから、最後くらい自分らしくありたい、

もしくは、思いっきり道化師のようなバカバカしい恰好をして、この不毛な戦争を皮肉ったのでしょう。

処刑されるとわかっている彼は、ジョジョに対して最後にこの言葉を残します

「お母さんは気の毒だった いい人だった わかるな? 」

「帰って姉さんの世話を いいな?」

この「わかるな?」「いいな?」という確認のセリフが優しくてまた泣けてきます、、、

こんな感じでキャプテンKは、ジョジョたちを裏で支え続けたメッチャ愛にあふれた人物なんです。

ちなみに、映画冒頭で子どもたちが本を燃やすシーンでは、彼はひとりだけ苦い顔をしています。

エルサについての解説・考察

エルサ

ジョジョの家にかくまわれていたユダヤ人少女のエルサ。

彼女は最初のころジョジョにたいして「(姉の)友達だったわ 小さい頃のあんたを覚えてる」と言っていますが、あれは彼女のウソです。

彼女は、ジョジョの家にかくまわれることになった理由について、物語終盤で以下のように明かしています。

「最後に両親を見たのは駅だった 2人は収容所へ 私は逃げて こっそり街に戻った 父の友達のツテで次々に家を移って最後にここへ」

彼女がいつから隠れて生活していたのか作中では明かされていませんが、少なくとも彼女がきたころにはジョジョはすっかりナチス信者になっていました。

また、ラストシーンでなんで彼女は踊りだしたの?と疑問に思った人もいると思います。

その理由は物語終盤でのジョジョとのやりとりで描写されています。

「自由になったらなにをする?」
「踊るわ」

また、生前のロージーも踊ることについて「命は神様からの贈り物 踊って生きるよろこびを伝えなきゃ」と言っていました。

こういった一連のセリフが、終戦で自由になって解放されたラストのダンスにつながってくるんです。

よくある質問

続いては、その他の気になる点をQ&A形式で解説・考察していきます。

Q.ゲシュタポ(秘密警察)ってなんですか?

A.ナチス政権に従わない者を弾圧する、残忍で冷酷な警察組織です。

ユダヤ人やナチス政権の敵となりうる人たちに対しては、何をやってもいいくらいの絶対的な権限をもっています。

終戦後は組織は解体され構成員も、それぞれ罪を問われましたが、一部の構成員はその能力を買われCIAなどに引き抜かれた者もいます。

また、局長のハインリヒ・ミュラーは、ヒトラーが自殺した直後の5月1日を最後に行方をくらましています。

その後、彼が見つかることはありませんでした。

Q.ゲシュタポの背の高い人の身長は?

A.演じたのはスティーヴン・マーチャント。

彼の身長は201cmです。

ゲシュタポは親衛隊から構成されており、親衛隊に入隊するのは身長173㎝以上という決まりがありました。

これは身長が低い人間は血統が悪いという考え方からきています。

ちなみにキャプテンKのサム・ロックウェルは175cm

Q.ヒトラーユーゲントとは?

A.10歳~18歳の青少年全員の加入が義務付けられたナチスの教育機関です。

ヒトラーユーゲントの権力が強まるにつれて、親や学校の教師は子どもをあまり注意できなくなり、若者の暴走は加速していきました。

連合軍はヒトラーユーゲントの部隊のあまりの若さに唖然としたと言われています。

そして、隊員のほとんどは捕虜になるつもりもなく戦場に散っていきました。

Q.クローンの子たちって何者?

A.当時のナチスではクローン人間を生成するために数多くの人体実験を繰り返していました。

クローン人間の生成が成功したとは思いませんが、このことは多くの映画や小説の題材になったりしています。

また、2018年には中国が同じ遺伝情報をもつサルのクローンを誕生させることに成功しており、倫理的な面から物議の声があがりました。

Q.ジョジョの母親はなぜ殺されたのですか?

A.ナチス政権に従わずに、「BEFREIT DEUTSCHLAND BEKAMPET DIE PARTEI(ドイツを解放しよう)」というビラを広めていたからです。

ナチス政権下では、このような活動の他にも、外国のラジオを聞くだけでも罪に問われ、場合によっては処刑されました。

Q.絞首刑にされた人たちのところに置かれている看板の意味は?

A.「Wir hoben das deutsche Volk betrogen」

これを訳すと

「私たちはドイツの人々をだました」

Q.親友のヨーキーはなんで戦争を生き残れたの?

A.原作でのヨーキーは早い段階で爆発に巻き込まれて死んでいるので、それをギャグにするために不死身のキャラとして描かれています。

作中でヨーキーの軍服が紙でつくられたものだという描写がありますが、これも実際にあった話です。

この軍服はM44野戦服と呼ばれ、紙の原料と同じ木製パルプを原料としたレーヨンと、ほんのわずかな再生ウールを使用した粗悪な軍服です。

Q.ジョジョのノートの最後に書かれていた、ケージに入ったウサギとカギをもった少年の絵の意味はなんですか?

A.これは、おそらくケージに入ったウサギは、閉じ込められたエルサではなく、1人になることが怖くてエルサと向き合えない臆病なジョジョ自身のことをあらわしているんだと思います。

Q.終戦後にジョジョがエルサの靴ヒモを結んであげるのは何を意味していますか?

A.今まで自分で靴ヒモが結べずに母親に頼りきりだったジョジョの成長をあらわしています。

Q.ラストでエルザはなぜビンタをしたのですか?

A.ジョジョが戦争はドイツの勝利だったとウソをついたからです。

ちなみに原作では、ジョジョはこのウソを貫きとおし終戦後の数年間エルサが自分のもとから離れていかないようにします。

Q.エンドクレジット前に出てきたリルケの詩を教えてください。

A.「すべてを経験せよ 美も恐怖も 生き続けよ 絶望が最後ではない」

ライナー・マリア・リルケによって書かれたこの詩は、彼の死後(1926年没)もなお後世に伝えられ、困難な状況にある人々に生きる希望を与え続けています。

Q.物語の時系列は?

A.1944年の12月から始まり、1945年2月までに母親のロージーが処刑され、同年5月9日に戦争が終わり物語が終了します。

それぞれ順を追って説明していきます。

まず言えるのはヒトラーの自殺が1945年4月30日でドイツの終戦が翌月の5月8日です。

そして、この時点でのジョジョの年齢が10歳6か月。

ジョジョが参加していたヒトラーユーゲントは10歳からですから、本作はこの半年間のことを描いた作品と言えます。

そうなると5月から逆算してスタートは12月です。

ドイツの12月といったら寒さは厳しいのですが、地域にもよりますが雪は意外と降らないんだとか。

なので、作中でジョジョと母親のロージーが散歩している風景が冬っぽくなくてもおかしくないんです。

その後、1945年1月にイタリア北部の防衛線が連合軍によって突破されます。

このことは作中でも描かれており、ロージーがご機嫌でワインを飲んでいます。

物語は進み、ロージーが処刑されますが、そこではじめて雪の描写があります。

おそらくこれが1945年2月くらいまでの出来事でしょう。

それから、ジョジョとエルサが夜に二人で外の景色をみて語り合うシーンは、おそらく4月中旬にソ連軍がベルリンに向けて大規模攻撃を仕掛けたときだと思います。

そしてラストにつながります。

『ジョジョ・ラビット』と原作『Caging Skies』との違い

映画の『ジョジョ・ラビット』と原作『Caging Skies』の大きな違いを簡単にまとめるとこんな感じです。

※原作のネタバレがあり

映画 原作
物語の舞台 ドイツ ナチス政権下にあるオーストリア
ジョジョ 10歳
顔と足に軽い傷
物語の過程で青年に成長
空襲をうけ顔の半分は麻痺し片腕は途中で切断
母親ロージー 風変りで強い女性 普通の女性
エルサ ジョジョに対して余裕がある
終戦後に解放
青年のジョジョに支配される
終戦後もドイツが勝ったとウソをつかれたまま不自由な生活を続ける
親友ヨーキー 最後まで生存 物語序盤で爆発に巻き込まれ死亡(名前はキッピー)
ゲシュタポ エルサを見つけ姉のインゲとして認識 エルサは見つからない

他にも、原作では空想上の友達のヒトラーや、軍のキャプテンK、フィンケルなども登場しません。

また、ジョジョはニックネームで呼ばれることなくヨハネスと呼ばれています。

そして、原作のラストでは戦争の結末を知ったエルサはヨハネスのもとを去ってしまいます。

こうしてヨハネスは独りぼっちになり物語は終わります。

他にも違いはありますが、こんな風にメチャクチャ暗いストーリーですし、なによりヨハネスが悪すぎます、、、

これはこれで、良い本だから原作として選ばれたのでしょうが、ちょっとヘビーです。

タイトルの『Caging Skies』の意味は

厳密には違うかもしれませんが「ケージ(檻)の中の空」といったニュアンスでしょうか。

物理的に長年にわたり閉じ込められたエルサと、自らの執着心や価値観に囚われたヨハネス

また、囚われながらも、いびつな関係を育むエルサとヨハネスをあらわしているのではないでしょうか。

あらためてタイカ・ワイティティ監督のアレンジ力と脚本力に感心します。

まとめ

今回、おすすめのヒューマンドラマ映画『ジョジョ・ラビット』の解説と考察をしてみましたが、あくまでこれは私個人の意見です。

人それぞれ感じ方は違うと思うので、あなたがもし私と違う考察をしたとしても、それも間違ってない素敵な意見なので大事にしてくださいね。

あなたもぜひ2回、3回と何度も観返してたのしんでください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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 1 件のレビュー

  • もえ より:

     主人公ジョジョの空想の友達は、かの有名なアドルフ・ヒトラー!この設定だけで見たくなっちゃいました。
     テーマが戦争やナチスドイツ、ユダヤ人の迫害であるだけに、ある程度覚悟はして鑑賞しました。
     しかし、この映画はただ戦時下の日常を描いた映画ではありません。愛がぎゅーっと詰まった映画なんです!
    特に、スカーレット・ヨハンソン演じるジョジョの母ロージーです。時には厳しいけど、その言葉は愛に満ちています。
    そんな母やユダヤ人のエルサ、その他のメンバーとの交流のうちに、ジョジョの世界が変わってゆく描写がとても素敵です。

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    WRITERこの記事をかいた人

    『おすすめ映画メモ』編集長のエリです。 評論家ではないので難しいことは気にせずに気楽な感じで楽しんでいってくださいね。